ウェブサービスやアプリなどのアイデアを思いついたとき、そのアイデアの中にはたくさんの仮説が隠れています。「こういう人は、こんなときにこの行動をするはずだ」というような仮説です。この仮説を仮説のままにしておくと、思うように使われないプロダクトになってしまうかもしれません。
仮説は、それが本当に成り立つかどうかを、プロダクトがアイデアの状態から運用段階にいたるまで、検証し続ける必要があります。ただ、どの仮説を検証すればいいのか?ということが分からないかもしれません。
私はプロダクトマネージャとして、ウェブサービスやアプリを開発してきました。この経験をもとに、検証すべき仮説を見つける方法として、「仮説マトリクス」という図の作り方について解説します。
テクニカルライター。元エンジニア。共著で「現場で使えるRuby on Rails 5」を書きました。プログラミング教室を作るのが目標です。
仮説を整理する必要性
この記事では、仮説を整理することによって、検証すべき仮説を見つける方法を解説していきます。まずはじめに、なぜ仮説を整理する必要があるのか?ということについて説明します。
仮説を整理する理由は、効果的に仮説を検証するためです。プロダクトには、あなたが気づいているかどうかに関わらず、たくさんの仮説が存在しています。例えば、次のような仮説があったりします。
- ユーザーはこんな課題を抱えているはずだ
- この課題を解決する方法はこれがいいはずだ
- 解決方法はこんなデザインで提供すべきだ
このような仮説について、ユーザーインタビューなどを通して検証していく必要があります。一方で仮説はたくさんあるので、検証する仮説の優先度を決めないと、どれから検証すればいいかが分からないかもしれません。
効果的に仮説検証を進めるためにも、仮説を整理することが重要になってきます。
ユーザーインタビューについては、本サイトの記事「ユーザーインタビューのやり方」をご覧ください。
仮説マトリクスの作り方
それでは実際に、検証すべき仮説を見つけるための仮説マトリクスの作り方を説明します。まずはじめに、思いつく限りの仮説を洗い出します。それをポストイットや、Miroなどのコラボレーションツールなどに書き出します。
その上で、仮説を次のような「重要度」と「不確実度」の2軸でマッピングしていきます。
このマトリクスの中で、検証すべき仮説は「重要かつ不確実な仮説」、つまり右上のブロックにある仮説になります。それ以外の、重要でなかったり、重要だけど成り立つことが分かっている仮説については、優先度は低くなります。
例えば次の図は、本サイトが想定している読者の方が抱えている課題についての仮説になります。この仮説マトリクスを抜粋すると、次のようになります。
このように分類することにより、検証すべき仮説が分かります。上記の例でいう「ウェブサービスやアプリをどうつくればいいか分からない」という仮説に対して、ユーザーインタビューを通して検証していきます。
検証すべき仮説について、ユーザーインタビューなどを通して仮説が成り立つことが分かったら、不確実度を高から低に移動させたり、図から取り除いたりします。
仮説の種類
関連する知識として、仮説にはどういう種類があるのか?ということを説明します。プロダクトにおける仮説には、次の3つがあります。
検証する順番 | 仮説の種類 | 説明 |
---|---|---|
1 | 課題仮説 | ユーザーはその課題を本当に抱えているか? |
2 | 解決策仮説 | 課題を解決する方法は本当にそれでいいか? |
3 | 製品仮説 | 解決策を提供する方法は本当にそれでいいか? |
プロダクトの開発においては、この1〜3の順番に仮説を検証していくことが重要です。なぜなら、製品を作るには解決策が決まっている必要があり、解決策を決めるにはユーザーの課題を特定しておく必要があるためです。
例えば、課題仮説と解決策仮説を検証しないまま製品仮説を検証するとどうなるでしょうか?解決策を提供する方法、例えば画面のデザインがいいものに仕上がったとしても、そもそもその解決策をユーザーは望んでいないかもしれません。これでは、誰も課題に思っていない製品を一生懸命作ることになってしまいます。
このような事態を避けるためにも、3つの種類の仮説があることを知っておき、上から順番に検証していく必要があります。
MVPキャンバスによる仮説の整理
もうひとつ、次はひとつひとつの仮説を整理する方法について説明します。例えば「読者はウェブサービスやアプリをどう作ればいいか分からない」という仮説をひとつとってみても、次のような情報が必要になります。
- 検証から何を学ぶのか
- どのように検証するのか
- 検証するコストはどれくらいか
これについて、仮説を整理する方法として、MVPキャンバスというツールがあります。これは検証する仮説の内容を整理するためのフレームワークで、AppSociallyの高橋氏とリクルートのメディアテクノロジーラボによって考案されました。MVPキャンバスのテンプレートを次に示します。
仮説を検証するときは、上の図に記入しておくことで、効果的に検証を進めることができます。また検証した結果を記入すれば、後からふりかえるときにも役に立ちます。
まとめ
プロダクトを開発する上では、仮説を検証することが重要です。どの仮説を検証するのか?ということを見つけるには、仮説マトリクスを作成する方法があります。また、仮説の種類や優先度をふまえた上で、MVPキャンバスを活用することで、効果的な検証を進めることができます。ぜひ参考にしてみてください。