ウェブサービスやアプリをつくるとき、そのプロダクトでユーザーはどんなことができるのか、リリースにどの機能が含まれるのかなど、プロダクトの全体像を把握しておく必要があります。そうでないと、必要な機能が抜けてしまったり、リリースタイミングが分からず他のメンバーとの必要な連携が取れなかったりするかもしれません。
プロダクトの設計やリリース計画などを見える化する手法としてユーザーストーリーマップがあります。この記事ではユーザーストーリーマップとはなにか、つくる目的やつくりかたについて書いていきます。
テクニカルライター。元エンジニア。共著で「現場で使えるRuby on Rails 5」を書きました。プログラミング教室を作るのが目標です。
ユーザーストーリーマップとは
ユーザーストーリーマップとは、ユーザーストーリーを整理し、プロダクトの設計とユーザーの行動、リリース計画を見える化したものです。ジェフ・パットン氏によって提唱されました。
ユーザーストーリーとは
ここでユーザーストーリーについておさらいしておきます。ユーザーストーリーは、プロダクトにおけるユーザーの目的を文章で表したものです。たとえばレシピサイトであれば、次のような文章がユーザーストーリーです。
- ユーザーはレシピを投稿できる
- ユーザーはレシピを検索できる
- ユーザーはレシピを保存できる
ユーザーストーリーを整理する
このユーザーストーリーを整理したものがユーザーストーリーマップです。プロダクトを使いはじめてから使い終えるまでのユーザーストーリーについて、横軸に時系列で、縦軸に優先度順で並べます。
このとき、ユーザーストーリーをリリースするタイミングによって線を引きます。これによって、どのリリースにどのユーザーストーリーがふくまれるかがすぐに分かります。
ユーザーストーリーマップを書く目的
ユーザーストーリーマップは、プロダクトの設計とユーザーの行動、リリース計画を整理するためにつくります。プロダクトを設計するときはユーザーストーリーを書きますが、ユーザーストーリーだけだとストーリー同士の関連が見えません。関連が見えないと、ユーザーの一連の行動に必要なストーリーが抜けたりします。
また、ユーザーストーリーはかんばんなどのタスク管理ツールで管理するのが一般的です。ただ、タスク管理ツールでは「このリリースにふくまれるユーザーストーリーはなにか」を確認するのには手間がかかる場合があります。これらの問題を解決し、また設計の全体像を確認するためにもユーザーストーリーマップをつくります。
ユーザーストーリーマップの書き方
ではユーザーストーリーマップのつくりかたについて書いていきます。ユーザーストーリーマップは、次の6つの手順でつくります。
- ツールを準備する
- 主要なユーザーストーリーを書き出す
- 時系列で並べる
- ユーザーストーリーを書き出す
- 優先度順に並べる
- リリースで区切る
1. ツールを準備する
まずユーザーストーリーマップをつくるためのツールを準備します。これはオンラインとオフライン、どちらでやるかで変わりますが、どちらも付箋を使うと便利です。オンラインでやる場合はホワイトボードサービスのMiroがおすすめです。オフラインの場合はポスト・イットのような付箋とペンを使います。
2. ユーザーストーリーを書き出す
次にプロダクトにおける主要なユーザーストーリーを書き出します。ユーザーストーリーは次のような形式で書きます。
(役割)は(行動)することができる
ここでいう主要なユーザーストーリーとは、「ユーザーはレシピを検索できる」のような大きい粒度のストーリーです。たとえば「ユーザーはレシピの検索結果を人気順で見られる」といった細かいストーリーは次のステップで書き出します。
また、ユーザーストーリーはユーザー視点でプロダクト上でなにができるかを書きます。「◯◯◯を実装する」のように、開発者の視点では書かないように気をつけます。
3. 時系列に並べる
書き出した主要なユーザーストーリーを横軸に時系列で並べ替えます。たとえばユーザーの行動を時系列に並べると次のようになります。
- ユーザーは会員登録できる
- ユーザーはレシピを検索できる
- ユーザーはレシピを表示できる
- ユーザーはレシピを保存できる
- ユーザーは保存したレシピを表示できる
4. ユーザーストーリーを書き出す
2で書き出した主要なユーザーストーリーに関連するストーリーを書き出していきます。たとえば「ユーザーは会員登録できる」に関連するストーリーは「ユーザーはメールアドレスで会員登録できる」「ユーザーはTwitterアカウントで会員登録できる」などがあります。
5. 優先度順に並べる
書き出したユーザーストーリーを優先度順に並べます。たとえば会員登録について、メールアドレスで会員登録さえできればTwitter認証は後でもいい、といった判断をします。
6. リリースで区切る
最後に、リリースごとに区切ります。「MVP」や「アルファ版」「ベータ版」などのリリース計画にどのユーザーストーリーをふくめるかを決めて、線を引くことで区切ります。
いつユーザーストーリーマップを書くか
ユーザーストーリーマップは、MVPをつくる前までにつくっておくとよいです。ユーザーストーリーマップはプロダクトの全体像を把握したりリリース計画を確認できるため、MVPや実際のプロダクトの開発を行う上でとても役に立ちます。
注意点
ユーザーストーリーマップをつくる上で重要なのは、つくらないユーザーストーリーを決めることです。ユーザーにとって便利なプロダクトにしようと、いろいろな機能をつくりがちです。ただ重要なのはその逆で、プロダクトをいかにシンプルに保つかです。これについては「プロダクトに機能を追加するかどうかを判断する方法」で詳しく書きましたので、こちらをご覧ください。
まとめ
ユーザーストーリーマップは、ユーザーストーリーを整理することで設計やユーザーの行動、リリース計画を分かりやすく示すためのフレームワークです。設計やリリースタイミングを把握できるほか、メンバーやステークホルダーとのコミュニケーションにも役に立ちます。
MVPをつくりはじめる前にユーザーストーリーマップをつくることでプロダクト開発に大きく役立てることができます。