Webサービスの運営に必要なカスタマーサポートですが、たんなる問い合わせ対応だけが目的ではありません。カスタマーサポートには、プロダクトが持つ仮説を検証したり、ユーザをファンにするといった重要な側面をもっています。
この記事ではカスタマーサポートとはなにか、目的ややりかたについて書いていきます。あわせてカスタマーサクセスとの違いについても示します。
カスタマーサポートとはユーザからの問い合わせを起点に、ユーザが抱える問題の解決をめざすことをいいます。プロダクトに問い合わせ用の窓口を設置して、ユーザとテキストベースでやりとりをします。
『カスタマーサポート』と聞くとマニュアルをもとに機械的に対応するようなイメージがあるかもしれません。ただプロダクト開発におけるカスタマーサポートはむしろ逆で、開発者自身がユーザと1対1で対応します。
とてもコストのかかる、でも重要な役割を果たします。
カスタマーサポートとよく似たものとしてカスタマーサクセスがあります。似ていますが、このふたつは明確に異なります。
カスタマーサクセスは、『ユーザの成功』を目的として、プロダクト側から能動的に実施します。たとえばユーザが迷わないようなチュートリアルを提示したり、ビデオ通話でトレーニングをしたりします。
一方のカスタマーサポートはユーザからの問い合わせを起点として、受動的にユーザの問題を解決するための対応をします。たとえばプロダクトの操作に関する質問やバグ報告などがあります。
カスタマーサポートは、実際にユーザの声を聞くことで次の2つを達成することを目的とします。
プロダクトの開発初期は、不確実な仮説がたくさんあります。この仮説をひとつひとつなくしていくために、機能をリリースして検証するプロセスをすばやく、たくさん回す必要があります。
このためには、ユーザの声を直接聞けるカスタマーサポートの存在が欠かせません。
プロダクトを積極的に使ってくれるアーリーアダプターに対し、カスタマーサポートをとおして密なコミュニケーションを取ることで、やりとりをしながら仮説検証を行うことができるのです。
また、このような開発者自身とのコミュニケーションは、問い合わせたユーザがプロダクトのファンになってくれる可能性が高まります。
プロダクトがProduct/Market Fitをめざす上で、プロダクトにたくさんの貴重な意見をあげてくれるファンの存在はとても重要です。いい意見をくれるだけでなく、口コミでほかのユーザを連れてきてくれることもあります。
前章で「カスタマーサクセスは能動的にユーザのために取り組む」と書きました。受動的に行うカスタマーサポートよりもよさそうに聞こえます。
もちろんカスタマーサクセスも重要ですが、これはプロダクトのステージによって重要度が異なります。
カスタマーサクセスの目的はプロダクトのグロースです。PMFを達成した後に力を入れると効果を発揮します。ただ、まだPMFを達成していないプロダクトの場合は仮説検証がより重要になります。このステージではカスタマーサポートに集中すべきだといえます。
以上でカスタマーサポートの重要性について書きました。次にカスタマーサポートのやりかたについて、次の4つの項目で書いていきます。
問い合わせの窓口ですが、開発者自身と1対1でやりとりできる手段を用意します。一般的なのは、Webサイトの画面右下にあるチャットの窓口です。これはIntercomやチャネルトークなどが代表的です。
個人開発でコストをあまりかけられないのであれば、Googleフォームや開発者のTwitterへの導線を置くのもよいでしょう。
ユーザからの問い合わせは、PMFを達成するまではサポート専任のメンバーは置かず開発者自身が行うべきです。開発者は仮説検証の知識をもっていますし、なによりプロダクトをつくるプロセスを見ることでユーザにファンになってもらえる可能性が高まります。
問い合わせには、たとえば次のような問い合わせがきます。
こういった内容への返信例を示します。どんな返信にも共通するのは、相手に返信を要求しないことです。つまり読み切りで大丈夫なように返信します。
また、もしユーザがプロダクトを積極的に利用していて、かつ熱量が高ければ、ビデオ通話などによるユーザインタビューを打診します。PMFをめざす段階では、このようなユーザの存在はとても貴重です。いいフィードバックをもらえたり、ほかのユーザを連れてきてくれるかもしれません。
問い合わせへの返信は、可能な限りはやく回答します。ただし、「確認します」といった無意味な一次回答はユーザにとって迷惑になります。調査に時間を要する場合のみ一次回答を行い、基本的には『3. どう対応するか』の内容をすばやく行えるようにします。
カスタマーサポートで注意すべきこととして、ユーザからの要望を直接実装してはいけません。プロダクトに機能を追加するかどうかを判断する方法でも書きましたが、以下のとおりユーザの課題をもとにゼロベースでアイデアを検討する必要があります。
アイデアの中にあるユーザの本質的な課題を抽出して、解決しないとプロダクトが成り立たない、あるいは解決すべき課題にのみ焦点をあてます。
重要度の高い課題についてゼロベースで解決策を考えることで、シンプルな機能をユーザにストレートに提供することができます。
カスタマーサポートは、MVPの検証が終わって実際のプロダクトをつくりはじめたらすぐにやるべきです。また、開発者自身が対応するのも、すくなくともPMFを達成するまではやるべきです。
PMFを達成しさえすれば、あとはカスタマーサポートチームをつくったり、グロースのためのカスタマーサクセスチームの構築に移行するとよいでしょう。
PMFをめざす段階では、カスタマーサポートは仮説の検証やユーザをファンにするという面でとても重要な役割を果たします。
問い合わせの窓口を設置して、開発者自身が真摯に対応します。ここでファンになってくれたユーザは、プロダクトを成長させるための大きな力になってくれます。